◆脱脂作業

 

   細部磨きを丹念に仕上げた赤城は、休憩するため、2人の前に近づいてきました。

 

赤城  「細部磨きが終わり、やっと磨きの工程が終わりました。

   ずっとそこにいては、退屈でしょう?」 

 

光男  「いえ、いろいろお話が聞けて、勉強になります。

   それに、これからメインのコーティング作業ですよね」 

  

赤城  「ええ、メインのコーティング作業ですが、塗るのは手塗りで、格好良くないですよ。  塗装のようなガンで吹きつけると格好良いんですけどね。  ペタペタ手で塗っています。

   これからの作業時間は、ほぼ読めます。  あと、1時間半くらいでしょうか。

   磨きは、ボディの状況やキズの落ち具合、細部の汚れの状況などで思ったより時間がかかる場合がありますが、コーティングはただ塗るだけですから、時間が読めます」

 

光男  「磨きの時間の方が、ずっと長いんですね?」

 

赤城  「ええ、お客様はコーティングしてくれればと思ってらっしゃる方がほとんどですが、コーティングをする前の磨き作業、いわゆる下地処理に時間がかかるんです」

 

裕太  「お疲れさまです」

 

赤城  「ありがとうございます。  結構磨きでくたびれました。

   では、コーティングの前に、脱脂作業をします。

   ボディをコンパウンドで磨きてきましたが、コンパウンドの中の油分が残っていると、コーティングがキッチリとボディに乗らないので、脱脂という、油分を取る作業をします。

   うちで使用する脱脂剤は、『クリーンアップ』という、コーティング後のメンテナンスでも使うアルコール系のものです。

   キズや凹みの補修の鈑金塗装の時は、塗装する前に完璧に油分を除かないと塗料がはじいてしまうので、キツイ脱脂剤を使用しますが、コーティング前の脱脂はそれほどキツイものは使いません」

 

光男  「以前のコーティングの時にもらったメンテナンス剤と同じですか?」

 

赤城  「それは、透明のものでしたか?  白でしたか?」

 

光男  「透明でした」

 

赤城  「それなら、今使っている『クリーンアップ』ですね。

   これは、磨きの後の脱脂にも使えますし、メンテナンス剤として、軽い汚れや初期のウォータースポット除去用として、また、水はじきも復活し、窓ガラスにも使える、結構便利なケミカルなんですよ」

 

裕太  「便利そうですね」

 

赤城  「使い方は、濡らして絞ったクロスにスプレーして、拭くだけです」

 

裕太  「簡単そうですね」

 

赤城  「ええ、簡単です」

 

   赤城は、車全体を『クリーンアップ』で拭く作業を手早くすませました。

  

 

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