◆磨き準備 《ネンド処理》

 

 赤城は、ボディにスプレーして、クロスのようなものでボディを拭き始めました。

裕太  「何をしているんですか?」

赤城  「鉄粉落しをしているんです。ほら、ここにネンドが付いているでしょう」

   赤城は、クロスの裏側のネンド部分を見せました。

裕太  「ネンドですか~?」

赤城  「鉄粉や樹液など、ボディに付着した物は、車専用のネンドに引っ掛けて落すんです。
  鉄粉は、さっきホイールに使ったケミカルで溶かしてもいいんですが、ボディによってはシミになることもあるし、ニオイもするので、もっぱらネンドを使っているんですよ」

光男 「クロスの片面だけに、ネンドが貼り付いているんですか?」


赤城  「以前は、ブロック状のネンドのかたまりを握って作業していました。

  最近では、この、クロスにネンドがついているタイプとか、スポンジの片面にネンドがついているタイプとか、いろいろ出てきました」

光男  「カーショップで水色やピンクのネンドは見たことがありましたが・・・」


赤城  「そうですね。それは以前から使われているネンドのタイプですね。

   でも、このクロスタイプも、スポンジの片面に付いたものも、ネンドのかたまりも、強くこすると、ボディ全体に薄いキズが広範囲に付いてしまいます。

   白やパールやシルバーなどの車だと、そのキズは目立ちませんが、黒などだと目立ちます。

   ここを見てください」

 

光男  「本当ですね。  塗装の凸凹がわかるようなものが広範囲にありますね。

   磨けば、この白くなった部分はなおるんですか。」

 

赤城  「ええ、磨けば、OKです。

   ですが、一般の方がむやみにネンドでこすると、うっすらとキズが付くので、何度もやると白ボケしてしまうことがあります。

   どうしても色の濃い車でネンドがけするなら、水をかけながら、軽い力でこするようにした方が良いと思います」

 

光男  「気をつけます」

 

裕太  「鉄粉や樹液が付くと、ボディはザラザラするもんですか?」

赤城  「ええ、高橋さん、この辺を触ってみてください」

裕太  「ザラザラしますね」

光男  「ほんとだ」

赤城  「ボディが黒のメタリックなので、鉄粉の色とかはわかりませんが、鉄工所や路面電車の線路の近くに置いてある車のボディがまっ茶色になっていることもあります。
   あと、雪が積もる所は、道路の中心部からお湯が出てくるところがありますが、融雪パイプのサビがドアの下半分に付いて、やはり茶色になっているのを見たことがあります。

  ずっと鉄粉をボディに乗せたままにしておくと、小さな茶色いシミになったり、そこからサビてくることがあります」

光男  「サビの原因になるんですか」

赤城  「あと、ボディへの付着物というと、ピッチ・タールなどがあります」

裕太  「ニコチン・タールじゃなくて・・・?」

赤城  「タールは同じものですが・・・。舗装したての道路を走ったりすると、アスファルトの油分が飛び散って、タイヤから後ろの部分・・・ドアステップやドアの下部分に黒い点々が付いたりするんです」

光男  「ピッチ・タールもネンドで落すんですか?」

赤城  「付着している度合いや状況によりますが、普通は、ネンドより、ピッチ・タールクリーナーで落とします。
  仕上げにネンドを使うこともあります。
  あんまり強いケミカルを使うと、クリア塗装を傷めることもあるので、マイルドなものから試すべきですね」

光男  「なるほど・・・。ピッチ・タールの元はアスファルトですか」

赤城  「樹液も、すごいものになると、窓ガラスがまっ茶色になったのがありました。信州で。
   これでよくよく前が見えるな~と思いました。女性が運転している車だったんですけどね・・・」

光男  「どう、処理したんですか?」

赤城  「ええ~っと、?、そうそう。ボディだけの施工だったので、窓ガラスはそのままにして返しちゃいました。
  今考えれば、何か樹液を溶かすケミカルをいろいろ試して、運転しやすい窓ガラスにしてあげるべきだったと思います・・・」

裕太  「窓ガラスは大丈夫そうですね」

赤城  「ええ、窓ガラスはクリアですね」

   赤城は、ボディ全体のネンドがけを終えました。

 

 

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