第1章 「洗車広場にて」

◆洗車広場 金曜 19時


   ある地方の城下町。
   暑かった夏も過ぎ、街はすっかり秋の景色になり、日が暮れるのも早くなってきました。
   仕事帰りの光男は、今週も車を「洗車広場」に乗り入れました。
   ”愛車精神” たっぷりの光男は、黒のスポーツカーに乗っています。洗車広場の水銀灯の光を浴びて、恐ろしいほどに光っています。
   (「ゴキブリのように光っている」と誰かに言われました、それは、ほめ言葉と受け取ってよいのでしょうか?)
   さあ、今晩も、じっくり磨き上げようか・・・と思ったところに、裕太がやって来ました。
   裕太は光男の幼なじみで、中古車屋でのミニバンを買ったと聞いていました。

裕太  「お~!すごく光ってるね~。光男の車!!」

光男  「手入れしてるからね~」 (自慢)

裕太  「この車、何年式?」

光男  「平成16年製だから、10年目か」

裕太  「全然、そんなに見えないね。俺、5年ものを買ったけど、あんまり光ってないな~」

光男  「どの車?ああ、あの車?・・・うわっ!これはヒドイね」

裕太  「そんなに引くなよ」

光男  「買ったときから、こうなの?」

裕太  「いや、もうちょっとキレイだったかも・・・」

光男「いつもココで洗ってるの?」

裕太  「いや、春に買ってから、2~3回洗ったかな?  洗うって言っても、雑巾で拭くだけだけど」

光男  「雑巾?」

裕太  「うん、雑巾」

光男  「水かけながら洗ってる?」

裕太  「いや、雑巾濡らして、洗ってるよ・・・」

光男  「それじゃあ、砂やホコリを巻き込みながら、紙ヤスリみたいに、ジャリジャリとキズつけながら洗ってるのと同じだよ~」

裕太  「そうなの?」

光男  「これじゃあ、車がかわいそうだよ」

裕太「じゃあ、光男のゴキブリ車を見習って、キレイになるようにするかっ」

光男  (こいつだったのか!俺の車をゴキブリにたとえた奴は!)

光男  「今晩、時間あるの?」

裕太  「うん。充分」

光男「じゃあ、俺の車を磨くのは今日はやめて、洗い方から教えようか」

裕太  「よろしく、おねがいしま~す」

光男  「晩飯、おごれよな~」

 

 

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