◆手荒い洗車
光男は、洗車する前に、まず、裕太に洗車についてのおおまかな知識を教えることにしました。
光男 「まず、ここ(洗車広場)には、洗車機と手洗いスペースがある」
裕太 「あの洗車機には、ノータッチと書いてあるけど・・・」
光男 「うん、あの洗車機は、高圧の水が上や横からかかるんだ。コーティングがよく効いていると軽いホコリとかは落ちるけれど、こびりついた汚れは落ちきらない。水がかかった後、エアで乾かしても、汚れが残ったままということがあったよ」
裕太 「じゃあ、どうすれば・・・?」
光男 「結局、あの洗車機でも、高圧の水がかかった後で、泡が出てから、みんな手で洗ってるよ」
裕太 「なんで、洗車に泡が必要なんだろう?」
光男 「手を洗うことを考えてみなよ。 手を洗うときは石鹸を使うだろ? 何で?」
裕太 「水だけでは落ちない汚れを落すため・・・」
光男 「そう、車のボディの上にも、水だけでは落ちない汚れが付いているんだ。春先の「黄砂(こうさ)」は、ただの砂じゃなく、遠くゴビ砂漠やタクラマカン砂漠から吹き上がった砂が、中国上空などの汚染物質と混じって日本に飛んでくるものので、水洗いだけでは非常に落ちにくくいんだ」
裕太 「物知りだな~。丁寧な解説、ありがとうございます」
光男 「それと、泡は摩擦係数を下げる働きをするんだ」
裕太 「マサツケイスウ?」
光男 「車のボディを柔らかい肌を水だけで直接洗うより、泡の上を滑らせながら洗う方がソフトに感じるだろう?」
裕太 「そりゃあ、まあ」
光男 「ボディに水をかけずに、雑巾で拭くなんてのは、≪手荒い洗車≫だよ!」
裕太 「んっ?≪気違い洗車≫?」
光男 「わざと聞き違えてるだろ?乾いたボディを雑巾で拭くより、せめてボディに水をかけてから、できれば、水を流しながら、雑巾じゃなく柔らかいタオルで、もっと欲を言えばこんなクロス(マイクロファイバークロス)を使った方がいいよ。東京の中心部のガソリンスタンドで、ロールスロイスやマイバッハ、ベントレーなんかの高級車を洗うのを見たことがあるけど、長靴をはいたスタッフが、ホースの水を出しっぱなしにしながら、車のボディを柔らかいクロスで軽く撫でるように洗っていたよ」
裕太 「俺は、洗うのがめんどうくさいから、早く終りたいっていう気持ちが強いね」
光男 「それで、雑巾拭きか~」
裕太 「俺の車、もう手遅れかな?」
光男 「まず、これ以上ひどくならないように、洗い方を変えようよ」
裕太 「うん」
光男 「洗うのは、クロスでもいいんだ。でも、泡を立てながら洗うなら、スポンジの方がいいね。こんな洗車スポンジは100円くらいだよ」
裕太 「洗車ブラシってのもあるね」
光男 「ああ、これ?」
裕太「そうそう」
光男 「これは、洗車ブラシって言っても、ボディを洗うためのものじゃないよ!タイヤやタイヤハウスを洗うためのものなんだ」
裕太「へえ~、そうなの」
光男「車のボディを、肌にたとえると、スポンジやクロスでは洗えるけど、このブラシでゴシゴシ顔を洗えるかい?」
裕太 「いや、痛そう」
光男 「裕太でさえ、そうだろう?このブラシでボディをこすれば、かならずキズが付くよ。俺の車をこのブラシでこすられたら・・・キズだらけになって・・・発狂するだろうな。この前、ここで、黒い車のボディを洗車ブラシでゴシゴシ洗っている人を見かけてたけど、言いたくても、言えなかった・・・。個人の勝手だし、洗車って趣味の世界だから」
裕太 「ボディに水をかけて、スポンジで泡立てながら洗って・・・ シャンプーは何を使ってるの?」
光男 「カーショップで買った、安いシャンプーを使ってるよ」
裕太 「ふ~ん。普通のね」
光男 「じゃあ、洗おうか」